射出成形で使用する熱可塑性樹脂の代表格『PEとPP』
ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)は、私たちの日常生活に最も深く浸透しているプラスチックです。
食品容器、包装フィルム、日用品から自動車部品、医療機器に至るまで、その用途は無限大です。
これらはどちらも「ポリオレフィン」と呼ばれる熱可塑性樹脂の仲間ですが、それぞれが持つ独自の特性を理解することで、製品開発や素材選定の可能性が大きく広がります。
この二大汎用樹脂であるポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)の基本的な特性を、分子構造の違いから読み解き、それぞれの素材がどのように役立っているかをご紹介します。

参考写真 左:PEペレットの一種 右:PPペレットの一種
ポリエチレン(PE)とは?その種類と特性
PEは、エチレンを重合させて作られるシンプルな構造を持つプラスチックです 。
このシンプルな構造が、優れた加工性と幅広い用途を可能にしています。
ポリエチレン(PE)の一般的な特徴
PEは、水よりも軽く、耐薬品性、電気絶縁性に優れています 。
特にLDPEは透明性、耐寒性、ヒートシール性(熱で溶着する特性)に優れるため、包装材料として広く用いられており、スパウトパウチのスパウト部や、フィルム資材にもよく活用されています。

ポリエチレンを使用した成形品の一例
ポリエチレン(PE)の種類と分子構造
PEは、密度の違いにより大きく以下の3種類に分類されます。
密度の違いは、ポリエチレンの分子鎖の枝分かれの程度(分岐度)によって決まります。
| 種類 | 略称 | 分子構造の特徴 | 主な特性 |
| 高密度ポリエチレン | HDPE | 枝分かれが少なく、分子が密に配列(結晶化度が高い) | 高い強度・剛性、耐熱性、防湿性、耐薬品性に優れる |
| 低密度ポリエチレン | LDPE | 枝分かれが多く、分子の配列が粗い(結晶化度が低い) | 柔軟で加工しやすい、透明性、耐寒性に優れる |
| 直鎖状低密度ポリエチレン | LLDPE | 側鎖が短い枝分かれ(LDPEとHDPEの中間) | 引裂き・突刺し強度、耐ストレスクラッキング性に優れる |
高密度ポリエチレン(HDPE)
HDPEは、分子鎖の絡まりが少なく、規則正しく並んでいる(結晶化度が高い)ため、強度と剛性に優れています。
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用途例: 灯油タンク、洗剤容器、パイプ、レジ袋(薄手)
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機械的特性の傾向: 引張降伏強度、曲げ剛性、耐衝撃性が高くなります 。
低密度ポリエチレン(LDPE)
LDPEは、分子鎖が無秩序に枝分かれしているため(結晶化度が低い)、柔らかく、柔軟性に富むのが特徴です 。
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用途例: 食品用ラップ、ゴミ袋、ビニールハウス用フィルム
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機械的特性の傾向: 伸びやすく、加工性が非常に良好。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
LDPEと似た密度を持ちますが、分子構造の枝分かれが短く、均一である点が異なります。
これにより、LDPEよりも引裂きや突刺しに対する強度(タフネス)が向上しています。
ポリプロピレン(PP)とは?その種類と特性
PPは、プロピレンを重合させて作られます。
PPには、PEとは違い、炭素原子1つと水素原子3つが接してできたメチル基というものが含まれた構造をしています。
このメチル基が組み込まれることにより、PEとは異なる特性が生まれます 。
ポリプロピレン(PP)の一般的な特徴
PPはPEよりも密度が低く、プラスチックの中で最も軽量です。
PEと同様に耐薬品性、電気絶縁性に優れます。
特に注目すべきは、蝶番のように何度も曲げ伸ばししても壊れにくいヒンジ特性(耐折曲げ性)に優れている点です。
これは分子鎖間の抵抗が低いことに起因し、PP製容器の蓋や蝶番部品に利用されます 。

ポリプロピレンを使用した成形品の一例
ポリプロピレン(PP)の種類と分子構造
PPは、メチル基の規則性(立体規則性)により主に以下の3種類に分類されます。
| 種類 | 略称 | 分子構造の特徴 | 主な特性 |
| アイソタクチックPP | I-PP | メチル基が規則正しく一方向に並ぶ(最も一般的) | 高い剛性・耐熱性、汎用PPの基本物性 |
| アタクチックPP | A-PP | メチル基の並びが不規則 | 粘着性、柔らかさ、低結晶性(ほぼ非晶質) |
| シンジオタクチックPP | S-PP | メチル基が交互に並ぶ(比較的少ない) | 柔軟性、透明性(アイソタクチックPPに比べ) |
アイソタクチックPP(I-PP)は市場で最も一般的に使われているPPです。
メチル基が一定の規則で配列しているため、高い結晶性を持ち、これによりPEよりも高い剛性と耐熱性(融点が高い)を実現しています 。
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用途例: ペットボトルのキャップ、食品トレー、コンテナ、自動車部品
ポリプロピレンの3つのタイプ(重合方法による分類)
ポリプロピレン(PP)は、プロピレンガスを重合させて作られますが、その重合方法(エチレン成分の混ぜ方など)によって、大きく分けて「ホモポリマー」「ランダムコポリマー」「ブロックコポリマー」の3種類に分類されます。
製品に求められる「硬さ」「透明性」「衝撃への強さ」に応じて、適切なタイプを選定することが重要です。
1. ホモポリマー(単独重合体)
プロピレンのみを単独で重合させた、最も基本的なポリプロピレンです。
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特徴: 結晶性が高いため、3つのタイプの中で最も「剛性(硬さ)」と「耐熱性」に優れています。一方で、衝撃には弱く、特に低温環境では脆くなりやすい性質があります。
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主な用途: 耐熱容器、家電部品、フィルム、延伸テープなど。
2. ランダムコポリマー(無秩序共重合体)
プロピレンの中に、少量のエチレン成分を不規則(ランダム)に混ぜ込んで重合させたタイプです。エチレンが入ることで結晶化が阻害されるため、透明性が高まります。
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特徴: ホモポリマーに比べて**「透明性」と「柔軟性」に優れています**。衝撃強度はホモポリマーより改善されていますが、剛性と耐熱性はやや低下します。
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主な用途: 透明ケース、食品包装フィルム、クリアボトル、注射器などの医療器具。
3. ブロックコポリマー(インパクトコポリマー)
ホモポリマーの中に、ゴム成分(エチレンとプロピレンの反応物)を微細に分散させた構造を持つタイプです。「インパクト(衝撃)」の名がつく通り、衝撃への強さが特徴です。
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特徴: ゴム成分が含まれているため、「耐衝撃性(特に低温時)」が非常に優れています。ただし、光を乱反射するため透明性はなく、製品は白濁(不透明)になります。
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主な用途: 自動車バンパー、洗濯機などの家電部品、冷凍食品用コンテナ、バケツ。
PP3タイプの特性比較表
特性を一覧にすると以下のようになります。
| タイプ | 剛性 (硬さ) | 耐熱性 | 耐衝撃性 | 透明性 | 主な特徴 |
| ホモPP | ◎ | ◎ | △ | △ | 硬くて熱に強いが、衝撃に弱い |
| ランダムPP | ○ | ○ | ○ | ◎ | 透明で柔軟性がある |
| ブロックPP | ○ | ○ | ◎ | × | 衝撃に強いが、白く濁る |
※ 一般的な傾向です。グレードによって異なる場合があります。
PEとPPの主要な特性比較
PEとPPは構造が似ていますが、メチル基の存在により特性に明確な違いがあります。
| 特性項目 | ポリエチレン(PE)の傾向 | ポリプロピレン(PP)の傾向 | 備考 |
| 密度(軽さ) | 低い(PPよりは高い) | 最も低い(最も軽い) |
PPは比重が1.0未満で水に浮く |
| 剛性(硬さ) | LDPEは低い。HDPEはPPより低い。 |
高い(PEよりも硬い) |
PPはメチル基の存在で分子が密に詰まるため |
| 耐熱性(融点) | 低い(LDPE: 90~120°C、HDPE: 120~135°C) |
高い(約160~170°C) |
高温殺菌が必要な用途にはPPが適している |
| 柔軟性・透明性 | LDPEが特に優れる |
PPはPEに劣るが、グレードによっては透明性が向上 |
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| 耐衝撃性 |
低温でも比較的高い(LDPEは特に耐寒性が高い) |
低温で脆くなる傾向がある |
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| ヒンジ特性 | 弱い | 非常に優れる |
繰り返し折り曲げに強い |
用途に応じた適切な材料選択のために
ポリエチレン(PE)は、その柔軟性と加工性の高さからフィルムや容器に幅広く使われています。
一方、ポリプロピレン(PP)は、高い剛性、耐熱性、そして優れたヒンジ特性を持ち、エンジニアリング用途にも使われる汎用性の高い素材です。
これらの特性の違いを理解することは、求める製品性能やコスト、製造プロセスに最適なプラスチックを選定するための重要な第一歩となります。
最適な素材選択についてのご相談、具体的な製品開発における技術的なサポートが必要となった際には、ぜひ弊社にお問い合わせください。

左:黒色着色したPE 右:着色無

左:着色無 右:白色着色したPP
Writer:もふもふ





